オンライン・トークイベント【後編】

私たちのこれから


「浜」とは、水域と陸域とのグラデーションの生活域、山と海が繋がっているところのことを指します。もちろん津波の心配は昔からありますが、その都度学び、土地の豊かさを衰えさせずに生活を継続してきた場所です。

 

山に浸み込んだ水が、山からの豊富な栄養とともに海底へ湧き出すことで海の豊かさを保つ。それにより山もまた豊かさを保つ。その循環に北上町の漁業も支えられてきましたが、ここ数年は磯枯れも見られ始めています。

 

*写真・図/オンラインイベント 高田宏臣氏

「昔は良かった」で終わらせたくない。

十三浜再生のヒントの一つとなるのが、今は機能しなくなってしまったけれど、かつてこの土地を豊かに安全に保って来た「水路跡」だと高田さんは話します。

 

荒れた土地にただ植えても木が苦しむだけ。ゆくゆくは藪になってしまう。

そうではなく、周りの環境も視野に入れ、木々の力も借りながら土地全体がより豊かに育つような働きかけをしていけば、その豊かさは一旦リセットされてしまった北上川流域の豊かさをも少しずつ取り戻していく力になる。大地の呼吸をもう一度取り戻すというのが、これからここで行われる再生です。


実際に、これから、どんなことをするの?

上記の写真の事例は、造成工事で残土が堆積された場所です。カチカチに固められた地盤に溝を掘り、水が浸み込む環境を作り、土を盛り、有機物を鋤き込んで大地の呼吸を再生しています。

 

十三浜でもこのように、大地そのものに水や風が通う竪穴や溝を掘り有機物を与え、堀った土でマウンドをつくり、そこに植樹していきます。決して、難しい作業ではなく、五感を使って楽しみながら、育つ木々や草花の成長を通して学んでいけば良いのです。

 


トークイベントの最後に

できるだけ多くの人に関わってもらい、私たちが今後、取り組むべきことを一緒に考えて頂ければと思っています。みんなで学び合いながら進め、地域の人たちが核となって環境を再生していく。

環境が良くなることは、その土地に住む人たちにとって、未来の人々にとっての希望です。

 

現代に生きる私たちが、単に「昔は良かった」だけでは、「なんでこれまで生きてきて何もしなかったの?」と子どもたちに問われたときに、なんと答えられるでしょう。

 

土地と向かい合い、何を必要かを考える。そして土地が育つ喜びを皆さんと一緒に実感して、これからもまた起こりうる災害に対して私たちがこれからどう向き合っていけば良いのかということを考えていくことができたらと思います。