
今日も、長塩谷地区の住民7名が集会所に集まっています。
長塩谷地区のある北上町が位置するのは、石巻市最北部。岩手県から約250kmもの旅路を経て太平洋へ流れ着く一級河川・北上川の河口に広がる町です。ある大学教授の先生によると、北上町は北と南の植生がちょうど重なる境界に位置しており、樹種がとても豊富で貴重な山なのだそう。
そんな豊かな山、そして雄大な北上川、リアス式海岸の太平洋も擁する北上町では、海のものも山のものも自分たちで収穫したり育てたりしながら、地域の中で循環させて暮らしてきました。
その豊かさは、ほかの町から嫁いできた人が「はじめてここに嫁にきた時に、銭がなくても暮らしていけるところだと思った」と口にするほど。
長塩谷地区の皆さんも、子どもの頃はそれぞれの家で茶畑を持っているのが当たり前。味噌は自分たちで育てた大豆から作る自家製味噌。家々に植えられていた胡桃、グミ、りんご…様々な植物に彩られていました。
こんな環境は思わぬ自然からの恩恵も。
「川っぷちにいっぱい生えてる胡桃はみんな、川から流れてきたやつが住み着いたんだ。だからほら、昔は胡桃拾いしてたっちゃ、おばあさんたち」
「震災前は砂浜に行って拾ってきたのよ」「あー、だよねぇ。あったあった」
「朝行って、流れ着いたやつ拾ってきてな」
スーパーに行けばたいていのものは揃う、そんな時代になっても続けられてきた素朴な営み。

それでも少しずつ、変化の波は押し寄せます。
こちらのお母さんたちは、山の話に夢中。
「枯れ木取りさ、山に入んねからダメなんだってば。昔は冬燃やす燃料に枯れ木とか倒木取ってきて、山が常にきれいになってたから」
「やっぱり多少間引きして陽が当たるとこも作らなきゃダメなんだけどもね」
と口々に言い合う一方で、
「今はもう山さ入りたくても入られないものなあ。頭の先に一万円札でもぶら下げねえと(笑)」と冗談めかした言葉。
年月の経過と時代の変化により山は少しづつ荒れ、そして集落があった場所は東日本大震災で被災。現在は雑草が生えるのみのがらんとした空き地となっています。
この辺りは水がおいしいという話は前回も出ましたが、長塩谷地区は特に水持ちが良く、枯れたことがないのだそう。昔は山からの水でそうめん流しをしたというエピソードも印象的でした。
そんな素朴ゆえの豊かさを、例えば100年後にそこで暮らす人たちに少しでも残していけるなら、その土台となる環境をみんなの手で整えていきたい。
そんな想いで立ち上げた平地の杜プロジェクトでは、苗や種を園芸店などで購入するだけでなく、長塩谷地区の森からも採取する計画です。
「ここらに生えてる木ならコナラとか楓?」「紅葉するものがいいなあ」「花も植えたいね。人を迎えるこの場所の玄関になる場所には、アジサイは!?うちで挿し木で増やしてるのを使えばいいから」などなどアイディアが飛び交います。前回の話し合いに出席していない人からも、自分のうちで育てているアジサイやバラを使っていいという言葉をいただいていて、実際に植える日がすでに待ち遠しい…!

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