住民向け 第一回説明会
2021年7月4日、被災集落跡地を活用しての「平地の杜プロジェクト」について、“第1の森”となる石巻市北上町十三浜長塩谷(ながしおや)地区の住民へ向けた第1回説明会を開催しました。
長塩谷地区は、このプロジェクトのスタート地点となります。 長塩谷地区は、震災前は〇〇戸・〇〇戸ほどの規模でしたが、東日本大震災後に人口が大きく減少。現在は、わずか●世帯になってしまっています。今回の杜づくりプロジェクトは、そんな長塩谷地区の方々とウィーアーワン北上とで進めていくこととなります。 第1回の説明会には、長塩谷地区の住民7名が出席。まずは、被災集落跡地の活用方が市でも課題としてあげられていること・被災集落跡地の活用を推進するために始まった「移転元地等利活用推進事業」の中の「地区共同利用」枠を利用してプロジェクトを行いたいと考えていること・その場合の貸付料、補助金の交付対象者、補助対象経費、補助金の額について説明しました。 続いて「平地の森プロジェクト」についても、具体的に説明を聞いていただきました。
私たちの今の一つひとつの選択が未来をつくる
集落跡地を地区共同利用していくとき、他の市町村等で見られる観光農園のような活用の仕方もあるけれど、北上地区は高齢化も進んでいることから、10年後、20年後も変わらず続けていけるかわからない。今の、そしてこれからの成長していく経済性も大切だけれど、それよりも、この乾いて荒れ果てた大地を「平地の杜プロジェクト」を通して本来の豊かな生態系に預け直していくことができれば、10年後20年後、あるいは100年後に、この地で暮らす子どもたちへ大切な財産を残すことになるのではないか。きちんと環境が整っている森なら、放っておいても自然の力で森は更新されていくので、草刈りなどの必要もなくなることもお話しました。
みんなの希望に変わる瞬間
正直なところ、プロジェクトの立ち上げ時点での、地域住民からの理解や、積極的な関わりが得られるか不安に思っていました。ところが実際にお話をしてみると、こちらの予想以上に積極的な意見が次々と出てきます。
「集落跡地の今の状態はなんとなく汚くて、見てて嫌だね」
「自分の土地を何年も放置していたら、全部竹だらけになった。毎年2ヶ月間は
竹切りをしていかないといけなくて、大変だ・・・」
と現状を訴える声。
「斜面や防波堤側にはアジサイなどを植えたらどうだろうか」
「山ツツジも自生しいるから、日当たりの良いところに植えるといいね」
「防波堤側に松を植えてしまうと、その後ろの日当たりが悪くなる。桜や広葉樹
であれば葉が落ちるから、道路が暗くなることもないが…」
「防波堤側は桜を植えてみるのも良いんじゃないか!?」 など植えたい樹木の話。
「東屋も欲しいね」という声が上がると「資材があれば自分達でなんとか出来るんじゃないか」と頼もしい意見も。住民のほとんどが60代以上とご高齢ですが、漁村集落で何十年も暮らしてきた方々。知識や技術は豊富です。
「昔、白浜の崖っぷちに榧の木がいっぱい生えていて、榧の実が沢山あったよね」
「昔はそれを炉端の中に入れて灰汁抜きに使ったな~」
「昔はみんな、それぞれの家でお茶の葉も育てていたよね。それを摘んで来て
家の炉端で炒っていたんだ」
「炭焼きもしていて、夜中に山へよく連れて行かれたな~」
「炭竃を作っていた世代は親の世代だが、よ~く作っているところを見ていたよ」 「この辺りは竹が多く生えているから、竹炭を作っても良いと思うね!」
長生きしていこうね
私たちだけでは知り得なかった昔の集落の話も次々に出てきます。まるで、当時 の香りさえ漂ってきそう。 皆さんの会話から、この土地の持つ記憶や、地域の人々がいかに自然と近い関係だったか、それゆえの土地への愛着などが伝わってきます。 「こういう森を作っていくなら、もう少し長生きしなくちゃないな」という言葉も聞かれ、このプロジェクトが“未来のため”であると同時に、この地域に“今”生きる人々の力にもなるのだという気付きもありました。
説明会を開催するまでは、まずは私たちが主体となって動いていき、少しずつ地域の皆さんにも関心を持ってもらえればという心持ちでいましたが、共にスタートを切ることができそうで、私たちにとって嬉しい説明会となりました。 今後も住民の皆さんとは、植える樹木や必要な器具・用具の話し合い、豊かな森を育てるための勉強会などを重ねていくと同時に、「枯れ葉ポスト*」の設置、種採り、育苗など集落跡地や周辺の森での作業も少しずつ進めていく予定です。
*枯れ葉ポスト・・土中環境に活用するため、地域住民から枯れ葉や剪定枝などを回収するためのポスト